朝未きの目合ひ

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それが少し悔しくて、少し遣る瀬無い。 「…もう離してよ」 だから心にもない事を言ってしまう。 素直に甘える事ができなくて、本当は離れたくなんかないくせについついキツい事を口走ってしまう。 …なんて可愛げのない女なんだろう。 つくづく面倒な女だと思いながらも、自分ではどうする事もできないのだから仕方ない。 「はぁ?なんで、無理」 迷うことなく拒否した敬は私を痛いくらいに抱き締め、髪に顔を埋める。 その動作は敬の癖のようなものだった。 別に何か不満があるわけじゃない。寧ろ敬はいつも私には勿体ないほどの優しさと愛を注いでくれる。 …ただ、少し。 「…ねぇ」 声を掛ければ後ろから「ん?」と囁くような声が返ってくる。布団をキュっと握り締めては、次の言葉を紡ぐために唇を動かした。 「もし私が浮気したら、どうする?」 長い期間を共にしてきたけれどこんな事を聞くのは初めてだった。
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