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「…敬?」
幾ら待っても返ってこない声。心配になって首だけで後ろを振り返ればすぐさまがしりと顔を掴まれ、ゴンっと額をぶつけられた。
小さく「いたっ」と張り上げた私の声に敬の低い声が重なる。
「これから出張行くってのに、普通んなこと聞かねえだろ」
「…だって…」
「だって、なんだよ。俺が居ない4日間、何かしようとしてんの?」
「ちがっ、そうじゃなくて」
ぶつけた額をぐりぐりと押し付けられる。
加減のないそれに「痛いっ」と声を上げれば、敬の唇が私の唇を塞ぐように合わさった。
チュっと音を立てて名残惜しそうに離れていく唇と、至近距離で交差する視線に胸が熱くなる。
「…じゃあなんでそんな事聞くんだよ」
怒っているというよりは少し拗ねているような表情で私をジっと見つめては、静かに私の真意を突き止めようとする。
「…だって、不倫とか浮気とかって…悲しいけどこの世界には溢れてることでしょう?」
ここ数年、特にそういった事を取り上げたニュースが増えてきたけれどそういう事が起きているのは芸能界だけじゃない。
学生の時から彼氏に浮気されたと言って泣いている子は沢山見てきたし、実際に妻帯者と関係を続けている同僚だっている。
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