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8年経った今でも、私にはそれが分からない。
「かわいーよ」
「…っ嘘だ」
だから、敬が言ってくれるその言葉をどうしても素直に受け止められない。
「嘘じゃねえよ。てか、嘘ついてどーすんだよ」
私を真剣な眼差しで見下ろす敬は、薄暗い早朝の造形にとてもよく映える。
学生の頃は明るかった髪色も今では黒く落ち着き、それが余計に彼の綺麗な顔を引き立てている。
『そんなに一緒に居て飽きないの?』
『マンネリなんない?』
そんなの、私の方が聞きたい。
私が、敬に聞きたい。
私と一緒に居て飽きない?って。
マンネリになってない?って。
「…どこ?」
そう言いながら伸ばした私の指をすぐに長い指が絡め取る。指先に触れる柔らかい敬のそれが「…何が?」と問いかけてくる。
「…私の、どこが可愛い?」
こんな事を聞けたのは、熱に浮かされていたからかもしれない。
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