朝未きの目合ひ

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敬は一瞬だけ目を丸くしたけれど、すぐにそれをフっと細めては口許に緩く弧を描いた。 「んー、数え切れねえくらいあるけど…」 至る所に唇を寄せながら下降していく敬の顔。擽ったくて身を捩りながらも、視線で敬を追いかける。 「…例えば、」 お臍にちゅ、っと優しいキスをひとつ落とし、 「俺が紐が好きって言ったら、紐にしてくれるとこ」 「…っ」 さらに下降した敬は私の脚の間に顔を埋め、下着の紐を軽く噛んでは器用にもシュルリとそれを解いた。 その光景がとても煽情的で、上目がちに私を捉える敬の挑発的な瞳から目が逸らせなくなる。 敬はとてもセックスが上手いと思う。 もちろん行為自体も上手いのだけれど、それよりも相手を高揚させるのがきっとすごく上手い。 例えすっぴんでも、髪の毛がボサボサでも、肌荒れが酷くても。 敬はいつも私を女として見てくれる。いつも私を、女にしてくれる。 「しーちゃんより可愛い女なんて居ねえよ」 敬の言葉はいつも、私の胸を痛いくらいに締め付けてくる。 「そこら辺にうじゃうじゃ居るよっ…」 「ふぅん?じゃあ今度紹介して。乱交パーティするから」 「なっ、最低!」 私を(まさぐ)っていた手をぺちんっと叩けば「いてっ」と声を上げてわざとらしく顔を顰めた。 「ばーか、嘘に決まってんだろ。さっきしーちゃんが浮気とか言ったから、その仕返し」 してやったりとばかりににやりと口角を上げる。その笑顔はまるで悪戯に成功した子供のようだ。
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