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私の顔中に軽いキスを降らしていた敬は目が合うなり困ったように、けれども優しさを滲ませながら表情を綻ばせた。
「俺が居ないとしーちゃん、寂しくて泣いちゃうんじゃねえの?」
「泣くわけないじゃんっ…」
「残念。俺は寂しくて死にそうなのに」
「…っ」
目尻に溜まった私の雫を敬の長い指が優しく拭う。
長い人生の中のたったの4日。
遠距離の時に比べたら、こんなのどうって事ない。
敬の出張が決まる度に何度もそう自分に言い聞かせるのに、なんの効果も持たない。
「…なんか不満そうな顔してねえ?」
ギュっと下唇を噛みしめている私に気づいた敬は肌の上に這わせていた手を止め、困ったように眉を下げてはそう問いかけてくる。
違う。不満なわけじゃない。
敬に対して不満なんて、あるはずがない。
ただ、少し。
…そう、少しだけ。
「しーちゃん、なんかあるなら言えよ」
「…っ」
…寂しい。
それだけなの。
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