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少し浮いた私の背中に逞しい腕が回り、痛いくらいにギュっと締め付けられる。
ハァーっと長い息を吐いた敬は、
「…行きたくねえ…」
どんな愛の言葉よりも私の胸を焦がすであろうその本音を小さく掠れた声に乗せて、私の耳に届けてくれた。
薄暗い空間に少しだけ心が落ち着く。
優しく私を包み込むその腕の中で、いつまでも敬に酔い痴れていたい。
もういっその事このまま日が昇らなければいいのに。
一生朝が来なければいいのに。
そう願う私たちの、切なくも甘い、目合い。
fin.
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