二つのフレーバー

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 駅前の催事コーナーには思っている以上に行列が出来ていた。それも全員が若い女性だった。どうやらこのお店はSNSで若者に人気らしい。それにプラスして朝の情報番組かなにかで紹介されていたというのを、行列に並ぶ女性たちの会話から知った。  昨日まではこんなに人は多くなかったのに。  などと苦言を呈したところで仕方がない。僕は行列の最後尾へと向かった。  女性たちがスマートフォンで、一生懸命にアイスの写真を撮っている姿はなんだか滑稽に見えた。いや、この若者のそれも女性ばかりの行列に、僕みたいな三十代に差し掛かった男が一人で並ぶ方が滑稽なのではないだろうか。  どうしたものだろうか。  と悩んでしまい、僕は行列に並ぶ直前になって足を止め逡巡していると、「おじさんも並んでるんですか?」と突然に声をかけられて、僕は咄嗟にそれを否定してしまう。  僕に会釈をして行列の最後尾に並ぶ女性の後姿がやけに立派に見えた。  僕なんかよりも、ずっと立派に。     
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