二つのフレーバー

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 叶は僕の返事も聞かずに、カップを僕の手から奪った。  中を見てなんの躊躇もなく、どろどろになって青緑色と茶色が混ざり合った美味しそうには見えないチョコミントのアイスだったそれを一気に飲み干した。  そんな叶の様子を、ただボーっと見ていることしか出来なかった。 「また申し訳ないなって顔してたよ? なんでそう思っちゃうかな?」叶はカップを持っていない方の手で僕の手を握る。 「私は、塁が、チョコミントのアイスを買ってきてくれた。私にチョコミントのアイスを食べさせてあげたいと思ってくれた。それだけで十分に嬉しいんだから。いいじゃない溶けちゃっても。それにね、私以外にこの第三のフレーバーを食べれた人ってそんなにいないと思うよ? そう考えると私はやったーって思えるよ。このフレーバーは塁が買ってきてくれたおかげで味わえたんだし、嬉しいよ。ありがとうね。っていうか、サプライズって初めてじゃない? なんか私、変に感動しちゃったもん」  そういって叶は笑いながら涙を流した。 「いやいや、だからなんで塁が泣きそうになってんの?」  僕も笑っているつもりだったのに、気付いたらなぜか涙がこぼれた。  こんな些細なことで、こうやって笑って泣ける叶との生活はやっぱり僕にとっては最高のものだ。分かっていたことだけど、改めてそう思った。
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