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階段を下りてきた女の人とぶつかりそうになり、すみません、と振り返りながら謝る。
普通黄色がレモンじゃないのか?透明がレモンって。じゃあ黄色はパイナップルか?と心の中で悪態をつく。
既に息が切れていた。
部活を引退してからすっかり走り込みを止めてしまった体が、ウォームアップ無しの急激な運動に悲鳴を上げる。それでも広志は決して足を止めることはない。
今さら、と千果には言われてしまうだろうが、やっと今ならちゃんと言える気がした。
千果はもう電車に乗ってしまっただろうか。
早く千果に追いつかなければならない。
この口の中の飴が溶けきって、証拠が消えてしまう前に。
《了》
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