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《1》
校門を出てすぐのダラダラと続く長い坂を下りながら広志は、そうだね、の同意が欲しいだけの言葉を口にした。
「もう明日卒業式かぁ」
「そうだね」
しかし千果の返事には、続きがあった。
「あ、卒業式終わってから、後輩も集まってくれて部室で写真撮るって」
「お、おぅ」
一瞬上手く行ったと思った分、声に落胆が滲んでしまった。ただ千果はそんな広志に気づいた様子なく話を続ける。
「半年ぶりくらいだね、部室行くの」
「そうかもな」
3月上旬、まだ肌寒さは残るものの日差しは穏やかで、もうあの真冬のキンと冷える感じはない。
この時期の高校3年生が学校でしなければいけないことはほどんと残っておらず、昼過ぎには帰宅できる。
帰路につく2人の周りに、同じ制服姿の生徒はほとんど見当たらなかった。
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