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三人は即座に諦め。恐々と沖田を見返してきた。
「刀を納め、腰から両刀を捨てろ」
三人がそれぞれ従って震える手でどうにか刀を納めると、腰から鞘ごと抜いて地に落とし。
鈍い音を立てて大小の鞘が、先の三人の血溜まりの内に跳ねた。
沖田が納刀し、その血塗れの骸を跨ぎ。
「両腕を背に回せ」
再び沖田の手が腰の刀のほうへ向かうのを、目にした三人が怯えた顔になるのへ、
「後ろを向け」
沖田は刀の下げ緒を引き抜き、
「おとなしくしていれば悪いようにはしない」
そう宥めてやりながら、
背を向けて両手を見せてきた彼らの、それぞれの手首へと巻き付け、纏めて一括りに縛り上げる。
「駕籠かき、こっちへ来てもらえるか」
三人に繋いだ下げ緒をもう一巡巻きながら、沖田が背後へ声を掛けると、
暫しの躊躇の気配のち、駕籠かきのうち兄貴分二人が、沖田の斜め後ろまで出て来た。
「へい・・っ」
「悪いが二人で近くの番所まで、後処理の者を寄越すよう連絡に走ってくれ」
駕籠かきは、つと地に横たわる三人の骸を強張った顔で見やって、無言で頷くと、大きく血溜まりを避けて道へと走り出て行った。
「来い」
下げ緒をぐんと引き、沖田は縛り上げた三人を路地の奥へ連れゆく。
血溜まりをうまく跨げなかった彼らの、足元が更に赤に濡れ。
三人纏めて背に両手を括られた不自由な姿勢で、沖田にゆっくり引かれながら進んでくる姿を、
駕籠の後ろから怖々と覗く残る二人の駕籠かきと、どこかぼんやりしている冬乃が見つめた。
冬乃は息も忘れそうなほどに立ち尽くしていた。
あまりにも、鮮やかで、疾風のような。
一分の無駄な動きも無い、
まばたきの合間の出来事。
喉を裂かれた彼らの死には、断末魔の悲鳴すら伴わず。
沖田に引かれ駕籠の前まで連れてこられた、すっかり蒼褪めた浪士達が、誰ともなく腰が砕けたようにへたりと座り込む。
駕籠の後ろからそのさまを尚もぼんやり眺めていた冬乃は、
一寸のち、はっと我にかえり。浪士たちから沖田へと視線を向けた。
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