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(・・冬乃)
彼女が沖田への想いを秘めていることは知っている。そして己も、また。
沖田は、心の目を瞑った。
今は一旦、彼女のことは、思考から追い出すべく。
掌を貫通した小柄を止血のため引き抜かぬまま、その手をだらりと横に下ろし、
残る片手のみで構える浪士の、得物を。沖田は一瞥した。
先程投げてきた矢よりは一回り大きいようだった。
同じく、持ち手である短い箆の、その先端に鋭い鏃を付け、あれが的確に中れば、小柄に劣らぬ殺傷力を持つだろう。いずれも懐に隠し持っていた、といったところか。
未だいくつ懐にあるのかは知らないが、すでに利き手を失い、その傷の痛みに耐えながら、どれほどの攻撃を繰り出せることか。
残る一人の得物に至っては、どう隠し持っていたのかさえ謎になるような小型の飛苦無が数本。
しかし剣の間合いの内では所詮あれも、その利点を活かすことは叶うまい。
とはいえ、曲がりなりにも飛び道具であり。
すぐ後ろに冬乃が居る以上、飛んでくるところを好き勝手に沖田のほうで避けるわけにもいかない。
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