沖田総司の刺客 (※多少の恋愛要素あり)

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     冬乃は、壁を背に、沖田を前に。  微動だにできずに。      だがそれも、あっという間の。沖田が告げた通りに、  ほんの僅かな間だった、    冬乃の前で沖田が、飛んでくる矢と苦無を全て叩き落し、脇差を納刀したのは。    「どうした、もう終わりか」    浪士達へそんなふうに声をかけながら沖田が、彼らに向かってすたすたと歩み始め。    顔を歪めて浪士達は、後退り。    最後に掌の短刀を構えた男が、もはやこれまでと思ったか沖田に向かって投げつけた瞬間に、沖田が抜刀し、弾き返された短刀は、浪士の背後の駕籠に勢いよく突き刺さった。    同時に、三人はいずれもその場に崩れ落ちた。      「貴・・・様・・」  男が呻き。    (・・うそ・・)    右手に大刀をさげ、一人立つ沖田の、  左手を見れば、鞘。    「な・・ぜ殺さ・・ぬ・・ッ・・・」  「悪いが死にたがっているやつを好き好んで殺してやる趣味は無いんでね」      今、冬乃の目にかろうじて映ったものは、  沖田が三人の鳩尾へ突きを打ち込んだ、残像。  彼らが生きているということは、使ったのは鞘だろう。  あまりにも速かったために、その突き自体すべて見えたわけではない。  (でも・・そうとしか・・・)      「こ・・殺、せ・・殺して・・くれッ・・・」    しかも浪士達が未だ話せるところを見ると、あの一瞬で沖田は彼らの動きを制する程には強く、かつ失神はしない迄に加減すらしたという事だ。     
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