近藤勇の本懐

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 待たずに食べてくれていいと言っても、笑って聞かないのだ。      その試衛館。    他の江戸の大道場からは、散々に、荒々しい野武士剣法と揶揄されていた道場だが。    試衛館では常、真剣勝負を想定し、真剣と同じ重さをもたせた太い木刀を稽古に使ってきたおかげで、  今この動乱の京で、近藤たちは、竹刀に慣れてきた江戸の大道場出身者たちの上をゆく剣で圧倒している。    それに、そうして成長期から重い木刀で散々鍛えてきた近藤と沖田は、当然、筋骨隆々の逞しい体をつくりあげた。    鍛え上げた胸筋と、どっしりした足腰に、鋼のような胴。  さらに沖田の場合は持って生まれた骨格にも恵まれ。高い背丈に、その広い肩は、逞しい上腕を支えて張り上がっていた。  申し分なく立派に成長した高弟の、褐色の精悍な顔を。近藤は誇らしげに見上げる。  「どうだった今日の外回りは」  そして今夜も、さっそく尋ねた。      局長である近藤は、沖田ら助勤職を直接に管轄してはいない。  彼らの実際の指揮は、副長である土方と山南がやっている。    だが、近藤もこうして、浪士たちの最新の動向を逐一確認していた。      「お、山南さん、おかえり」  「ただいま、近藤さん」       
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