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人々の視線を浴び、
「町中じゃ目立つ」
いずれ前をゆく尾行対象から、気づかれる可能性が高い。
「よほど距離を置いてもいいなら別ですがね」
「いや、先にも言ったように、十数歩のみ後ろでぴったり付いてもらう」
「・・・」
ふわりと春風が土方の手にある書簡をはためかせた。
「目立てば目立つほど良い」
そして土方は、にやりと哂った。
「どういう意味です」
怪訝な顔になる沖田に、土方がしてやったりとほくそ笑んだ。
「付けまわされてると気づかせ、怖がらせるのが今回の狙いだ。しかもおまえらなら敵方に顔も腕も知れ渡っている。うってつけだ」
「ああそう」
随分とまた可笑しな尾行だと、ついに大口で笑いだした沖田の横で、
勿論、斎藤は無表情のままである。
「詳細は最終的な案をまとめて後ほど監察から伝える。明日実行だ」
俺からの話は以上だ、と土方は切り上げた。
「ま、窮鼠猫を噛む、なんてこともある。一応、尾行中の反撃に備えて気は張っておけ」
そうして。
人の往来にぎわう町のど真ん中。
沖田と斎藤は、つけまわしていた。
とある旅籠から出てきた男を、もう四半刻ほど。
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