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ぶわっと沖田は欠伸をした。懐手にのんびり大股で歩みながら、つと隣を見下ろせば、
斎藤が背をすっと伸ばして、その最初から全く変わらぬ姿勢でまっすぐに前を向いたまま、音もなく忍びやかな足運びを続けている。
目立っていた。
二人は、どうしようもなく目立っていた。
ちらちらと盗み見る人々から浴びる視線の中、沖田は苦笑しながら斎藤から前の男へと向き直る。
二人は男のたった十数歩後ろをぴたりと保っていた。
当然もう男のほうは、通りすがる人々がこぞって己の背後へと視線を送り続ける魔訶不思議な現象に気がついて、
しばらくは酷く振り向きたげな様子で、何度も半分だけ沖田達を向いては、とにかく進まねばとばかりに足早になってを繰り返していたが、
ついに先ほど勇気を出した様子でぱっと振り向いて、
沖田と斎藤の顔をばっちり見て、慌てて前へ向き直った。
まだその時点では、沖田達が偶然に後ろを歩いているだけだと思おうとしたに違いなく。
そもそも、その場でいきなり沖田達から逃げ出せば怪しまれると危ぶんで、男は我慢して平静を装い歩み続けるより他なかったであろう。
だが、いつまでも人々による摩訶不思議なる現象は続き、つまり沖田達が後ろを歩き続けているさまに、
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