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池田屋以降、むやみに抵抗してくる者は少なくなっている。
新選組も当然、向かってこない者を斬り捨てはしないから、踏み込むに至った場合も両者互いにたいして血をみることもなくあっさり終わるものだ。
そもそも踏み込む時は、敵方が抵抗を諦めるほどの大人数で向かうのが鉄則だ。当然といえば当然だった。
血をみることが多いのは、むしろ、町中である。それも突然起こるような類い。
つまりは。
「斎藤、」
男を見据えたまま沖田は、隣の斎藤へ低く声をかけた。
「後ろは任せる」
「ああ」
涼やかな面持ちを崩すこと一切なく、斎藤が静かに答えた。
―――襲撃。
前から抜刀した数人の男達が、悲鳴をあげる人波を掻きわけ雪崩れ込んできた。
連絡係の男は、急変した事態に驚いた次には大層安堵した様子で、あっというまにどこかへ駆け去ってしまった。
後方にもバラバラと足音が轟く。
すでに監察は組へ連絡に走っていることだろう。
まあ予想はしていたが、と内心沖田は失笑する。
ただでさえ目立ちながら、よりによって沖田と斎藤が揃って長らく歩んでいれば、血の気の多い不逞浪士の誰かしらの目にも留まるのは当然だ。
呼び合って、急ぎこの人数を集めたのだろうが。
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