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町中での斬り合いはとかく騒がしい。
居合わせた人々の悲鳴が飛び交い、皆そこかしこを縦横無尽に逃げまどう。
沖田はそんな喧噪の視界の端に、しんと佇んでいた斎藤が水もたまらぬ抜き打ちで一人の胴を払うや、
身をひるがえし、時一瞬にして斎藤へ振りかぶっていた二人の腕を薙ぐ一閃とその残像を映した。
斎藤の、静から動へと変わる瞬間は。
見る者を、呑みこむ。まして、
受けた者は。
「・・く・・・あ・・!」
「う・・ああああ!」
その身に何が起こったのか。刹那には認識など追いつかず。
打ち込んできた男の首を飛ばしながら沖田は、己へ一気に距離を詰めてきた男へと斎藤から視界を切り替える。
示し合わせるように横合いから斬りこむ男の一刀を躱しざま、急所へ突きを入れ、
同時に先の男の背後を取った時。
まだ沖田の間合いの一歩外で慌てて振り返る男の、手が同時に、
常人には追えぬ手練れた速さでその懐へ向かうのを、沖田の目は捉えた。
咄嗟に男の双眸を見据えた視界の端に、次には取り出された短筒が映った刹那、
男の目が狙う位置を見定め、跳び避けた。
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