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パアン
音がむなしく響く中、
すでに沖田の抜き放った小柄が、男の手の甲を深々と刺し貫いている。
銃声に一瞬、斎藤からこちらの安否を確認する気配が起こり、
大丈夫だ、と沖田は、脇へ突進してくる別の男を袈裟に討ち下しつつ目くばせした。
手を刺されたせいで二発目を打てずに短筒を取り落とした男が、よろよろと後退るのを放置し、その横で逃げ出す男の背を峰打ちで薙ぎ払いながら、
斎藤が最後の浪士と二三合の内に鮮やかな一閃で討ち取ったのを確認し、沖田は血糊を払い納刀した。
捕らえた浪士達から結局、判明したことには、
普段ならばとうに連絡役が到着していてもいい時刻になっても一向に現れぬさまを心配した浪士達が、様子を見に旅籠を出て町を見回ったところ、沖田達とその先をゆく連絡役を発見し、応援を呼び合ったのだそうで。
要するに“いぶり出す” までを期せずしてその日のうちに完遂した結果に、土方も監察も大満足で、
沖田はやれやれと肩を竦めつつも。
今も無表情の斎藤が、横でずずっと茶を啜るのを見やり。
その常の変わらぬ光景に、最早ふっと相好を崩した。
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