土方歳三の機転

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 「新見”元”局長は、本日付けで脱退なされた」      (・・何?)    切腹、という言葉が出てくるものとばかり構えていた永倉は拍子抜けし、その予想外の台詞に、近藤の次の言葉を待った。    脱退だと?    「どういうことだ?新見は今どこにいる!」  芹沢の苛立った大声が場に落ち。    「芹沢局長もご存知のように、」  落ち着きはらった近藤の声が、朗々と響いた。    「新見元局長は、これまで数々の私用目的の金策、酒の席での狼藉、暴行を繰り返されてきた」    山南が、おもむろに懐から数枚の書類を取り出し、芹沢の膝元へと並べる。  それへ目をやった近藤が、改めて芹沢の目を見て。  「これらはほんの一部ですが、新見元局長の金策の証しとして押収した借用書です。これらの殆どはつい先程、守護職へ渡して参りました」    「そして直ちに、これらの証拠をもって最終判断とされ、守護職から我々へ新見元局長を罷免するよう下知が下された。我々は先程、新見殿へその旨を伝えて参りました」      新選組を召し抱える身として守護職会津は、仮にも一局長である新見のこれまでの所業を良しとせず、  長らく近藤達は、糾弾のための決定的な証拠を求められていた。       
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