土方歳三の機転

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 そして、それを入手できても、できなくても。責任を取らせ詰め腹を切らせることも。    土方達はそのために実行日を定め、計画していたはずだ。      (なのに、脱退・・とは)    「本来ならば、新見元局長は咎を負って、罷免のち、切腹を申し付けられる筈でしたが、」  拳を戦慄かせている芹沢に、諭し聞かせるように。近藤が続けた。    「酒癖さえなければ、あれほどの人物。死なせるには惜しいと、恩情を求めるその筋の訴えをお聞き入れになった会津公により、内々に脱退させるよう申し付けられ、新見元局長は追放と致しました」    芹沢の眉間は激しく狭まった。  「その筋とは誰ぞ?」  「それは今この席でお伝えする事ではござらぬ故」  近藤の、穏やかながら追尋を許さぬ断言が返った。  「・・・」    場に流れる緊張の糸が。今にもぷつんと切れそうだった。    永倉は息を凝らし、芹沢の動向を見守った。      「・・・この話は、真か?ならば何故、新見はわしに別れの挨拶にも来んのか」  「世話になった芹沢局長に、恥を知った身で顔を合わせるわけにはいかぬと言って去られた」    「そのような話、信じられるか!!」    芹沢の一喝に、部屋の隅で縮こまって食事をしていた給仕が、小さく声を漏らして飛び上がった。     
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