強請る三夜

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マスターを相手にちびちびとグラスを煽っていると胸ポケットに入れた携帯が長く震えた。 電話だ。 取り出して見てみるが知らない携帯番号からの着信。 「はい?」 訝しげながらも出てみると、沈黙。 切ってしまおうかと思ったその時、息を吸う気配がした。 「紫音?」 息を飲む気配に続いて、漸く声が聞こえた。 『なぜわかったんです』 不本意だと拗ねた顔が思い浮かび斎藤は笑った。 「愛の力、かな」 『くだらないことを言わないでください』 「本当の事だよ」 黙り込む紫音が照れているのだとわかる。 あぁ、今すぐ抱きしめてキスがしたい。 引っ込めた舌を吸って上顎をなぞると控えめに甘えてくる舌を思う存分吸って舐めてやりたい。 薄くなっているだろう身体中につけた痕を上書きしてとろとろに蕩けた顔の紫音を何度も果てに導いてやりたい。 『聞いてます?』 うっかり妄想に浸っていた斎藤は紫音の声に意識を取り戻す。 「ごめん、何て言った?」 『ですから、先程までのお客様は帰られましたと言ったんです』
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