01 始まり

2/5
前へ
/15ページ
次へ
~この物語をご覧になる皆さん、はじめまして。私の名前はアザゼル。この物語の語り手にしてこの世界を創り給うた蒼星神アルファ様にお仕えする者だ。今回から数回にわたって、私の主の幼き日の思い出をご紹介しましょう。~ ―創界暦494年、プロトアース― プロトアースとは、臨海市にある電脳世界研究所と臨海に本社を構える大手ゲーム会社frees《フリーズ》が共同で作り上げた仮想世界のことで、本作の主人公・馬宙(まひろ)の父・(さとる)も携わっている。 本来ならばデバイスを用いてダイブするのが普通だが、そもそもそれに追い付けるほどのデバイス開発が着手できないため、直接ダイバーを募り、社内の特設ブースで専用機材を介してダイブさせている。 プロトと付くだけありまだまだ技術面で改良の余地がある部分もあるが、当時の研究の成果としてはかなり成功していた。 人間の五感すべてを反映させる、男性はもちろん、女性にも興味を持ってもらえるような工夫がいくつもされていた。 その例として、剣やら銃やら魔法やらが使える他、さまざまな服などから自由に選んで組み合わせることができる。 さらに現実と同じく、恋愛もとい結婚、職について労働ができたりと子供のみならず大人も楽しめるコンテンツばかりだった。 当時十歳だった馬宙はあっという間にこの世界に魅了されていった。 ―スターティア郊外の森― 「うおおおっ!」 「相変わらず踏み込みが甘いな、馬宙!」 カァーン! 「わっ…!?」 馬宙と遥は森の中にある開けた場所で木製の剣を用いた修練に励んでいた。 この世界では実年齢に合わせていろんなシステム権限が与えられていく。そのため、十歳以上になると男子は剣を持つことができるようになる。 しかし、十歳の馬宙にとっては木製の剣を振り回すだけで手一杯だった。 「まだまだ!オレは諦めないよ、兄さん!」 「何回でも来い!何回も跳ね返してやるぞ!」 「はぁっ!」 カァーン!ギリギリ… 「おっと、十歳にして鍔迫り合いか?」 「鍔迫り合いなら兄さんにだって!」 「お前はこのゲームのことを何一つ分かってないなぁ。」 馬宙はあっという間にはね飛ばされた。 このゲームにおける力具合は実年齢に比例しており10~30歳くらいまではかなり力の数値が高くなるが、十歳の馬宙は兄よりも年が離れてる分、どうしても力負けしてしまう。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加