第一部 出会い

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第一部 出会い

ビルの屋上のフェンス越しから、ライフルを構える。ライフルのストックを右肩に当て、右手の人差し指は引き金を引く準備に取り掛かる。そして、左手で銃身を支え、スコープを覗き込む。  スコープに映し出される標的の男。厳つい表情で、建物の正面の扉を空け、正面の階段を下り始めた。標的に照準を慎重に合わせる。一発で確実に倒すために。標的の男がゆっくりと階段を下り、立派な顎鬚に手をかけ、立ち止まった瞬間!  容赦なく引き金を引く!  プスッとタイヤの空気が抜けたような音がすると同時に、標的の男の頭が吹飛び、標的の男は大の字に倒れ、辺り一面は血の海とかした。  私は素早く身を屈め、ライフルを足元に置き、黒いギターケースの中に収納し、ビルの屋上の西側にある非常階段へと向かった。ギターケースを抱え、ゆっくりと階段を下りていく。焦る必用はない。サイレンサーで銃声は消している。標的とはそれなりの距離もあったはずだ。見られてはいないだろう。下手に急いだりすると、返って怪しまれてしまう。ギターケースの中身がばれてしまったら、それこそ一巻の終わりだ。     
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