第一部 出会い

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 冷たく灰色に光る金属の非常階段を下り、私は建物の反対側に出て、建物と建物の間の狭い路地を歩き、私は何食わぬ顔で表通りに出た。  表通りは人だかりで満たされていた。当たり前よね。突然、目の前で人間の頭が破裂したようなものだからね。しかも、映画やテレビじゃなくて、目の前で本当に起こったからね。無理も無いか。  私はそんな人だかりを横目に、黒いギターケースを抱え、ミュージシャンにでもなったつもりで、現場をさっさと歩き去った。  私の名前は朝霧 利衣菜(あさぎり りいな)。仲間からは、『りーな』と呼ばれている。仕事は花屋の店員……。いや、それは世間を偽るための仮の姿かな。 本当の仕事は殺し屋! 仲間が殺しの依頼を受け、ターゲットの素性を調べる。そして、仲間がターゲットをこの世にのさばらせて置くべきではないと判断した時、そのターゲットを仕留めるのが私の仕事。殺し方は色々……と言うか、ケースバイケース。今回は、ライフルで狙撃する方法を選んだだけ。決して楽しい仕事じゃない。いくら悪い人間とは言え、人の命を抹消している訳だから。     
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