第二部 新しい生活

3/10

32人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
「目が覚めたかい。食べ物を買いに行ってたんだ」  メロウはテーブルの上に買い物袋を置いて、私の方を振り向いた。 「適当に食べて」  と優しく語り掛けるように、私に話した。  私は、テーブルに近寄り、買い物袋の中を覗き込む。早速、オレンジジュースに目が行った。オレンジジュースを掴み、素早くパックを開けて、がぶ飲みする。それから、サンドイッチを貪った。昨日の昼から何も口にしていない私の体内は、一気に癒されていく。 「そんなに慌てなくなくても大丈夫だよ。たくさん買ってきたから」  壁に凭れかかりながら、メロウが笑顔で話し掛けて来た。 「うん。ありがとう」  口の中が飽和状態になっていたため、満足に答える事ができない。サンドイッチの後、おにぎりを二個くらい平らげて、ようやく少し落ち着いた。 「そんなにお腹が空いていたんだ」 「昨日の昼頃から、何も食べていなかったから」 「そうなんだ。昨日は本当に大変な目にあったんだね」 「うん……。二度と思い出したくない。昨日は本当に嫌な日だった」 「そう……」  静かに頷くメロウ。私を見つめる静かな緑色の視線の中に、何処となく殺気立った物を感じたけど、余り気にしなかった。空腹が満たされるだけで、今の私は満足だったから……。     
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加