第六部 刺客

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 人相を書いた画用紙を手に、微笑みながら私に合図する美由。後は、何処の誰だか分かれば、対策を練ることが出来る。不意に私に襲い掛かってきた男。ナイフの扱いはプロ級だった。恐らく銃の扱いプロ級だろう。やっかいな輩に、狙われたものだ。けど、やられる訳にはいかない。 私は死にたくない。今度会った時は、必ずあの男を倒す。いや、殺す!それが、私が生きていくために残された、唯一の道だから。    術後の経過は良好で、五日後には糸が取れた。私がこうして元気になることが出来たのは、剣浜さんお陰だ。剣浜さんに感謝をしながら、体を動かし始めた。常に体を鍛えていないと落ち着かない私にとって、苦痛の五日間だった。 「りーな。傷が治ったからって、あまり無茶するなよ。自分が狙われている事を忘れないでくれ。 お前は、俺にとって新しい家族みたいなものだから。こんな仕事をやっていてなんだが、お前や美由を失う事は、親を失うより辛い」  体を動かし始めた矢先、早速剣浜さんから忠告されてしまった。けど、とても暖かい言葉だ。 メロウを失い、ルイナさんと別れて、一人ぼっちだった私にとって、これほどありがたい言葉はない。心の底から、暖かい感情が一気に湧きあがってきた。  剣浜さん。そして、美由。この二人は、私にとっても新しい家族だ。それを、決して忘れてはいけない。私は満面の笑みを、剣浜さんに浮かべる。 「頼むから、無茶するなよ」  剣浜さんも微笑みで返してくる。私も更に微笑みで返す。     
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