手の届かない君

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「どうした、心ここに有らずって顔して・・・」  その声で、高木は我に返った。 「ああ、びっくりした。覗くなよ、愛華・・・」 「は、はーん。このあたいを名前で呼ぶとはいい度胸だ。それとも、もしかして、あたいのことが好きなのか。まあ、そんなわけないよな、ヤリマンなんて言われてさ。高木もそう思うだろう」  愛華は寂しそうな表情を浮かべた。  慎也は大きく頭(かぶり)を振った。 「愛華が言ったんじゃないか。名前で呼べ、って・・・」 「なんだ、そっちの方か。言ったよ、確かに言ったさ。でも、高木は大きな過ちを犯している。愛華じゃなくて、愛華さまだ。バツとしてスマホは没収する」  愛華は間髪入れずに慎也の手からスマホを奪い取った。 「返せよ、スマホ」 慌てて出した慎也の手は空振りして宙を泳いだ。
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