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「喜べ、若人(わこうど)、あたいはイイ奴だ。あたいが代わりに掛けてやる」
愛華はアドレス帳の『手の届かない君』に人差し指を向けた。
「やめろ・・・」
「ざまあー、押しちまった」
愛華はチョロっと舌を出した。
「ブー、ブー」
「えっ、あたいの・・・」
愛華は慌てて自分のスマホを取り出して耳元に翳した。
「もーし、もーし、聞こえないぞ・・・」
「この電話は現在、電波の届かない所にあります」
伏せていた目線を上げると、目の前にそう言っている慎也の姿があった。
「アホかお前、手の届く所にいるくせに。手が届かないのは、お前の根性がないからだ」
慎也は顔を真っ赤にして黙り込んでいた。
「好きなら好きって、ハッキリ言えよな・・・」
愛華は慎也の手を取ると、慎也のスマホを手に握らせ、自分の手で上からギュッと握りしめた。
「今、わかった。今度は僕が愛華を守る番だ」
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