真実

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 ふと、思った。今の話、出来過ぎている。本当だろうか?、それとも所々本当なのだろうか?、はたまたまるっきり、作り話なんだろうか?・・・。そんなことを考えながら、上流に向かって歩き始めた・・・。  それが、瞬時に見分けられる能力が自分にあれば、人との距離感をつかむのに苦労しないんだろうな、なんてことを思うと、自分の中のもう一人の自分が、異論を挟んできた。人が発する言葉に、嘘も本当もない。その人が人としてそこに存在していることが真実である限り、その人の発することはたとえ事実と異なっていても、ある意味真実なのだ。  例えば、丸々太った生活習慣病予備軍のオヤジが、フルマラソンを2時間半で走れると豪語したとしても、そうなんだ、この人は2時間半で走れるんだなと、それをいったん受け入れて、その前提で付き合っていけばよい。そうすることによって、いずれ、その人の心の深淵を垣間見ることが可能になり、本質の理解につながっていくはずなのだ。否定からは何も生まれてこない、まずは無条件に肯定することが肝要なのだ。なんて、頭の中でちょっとした哲学的な問答を展開し、少しばかり悦に入っていると、足元の石に思いっ切りつまずき、見事に転んだ・・・。
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