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ティルは、男とぼくとぼくが手にしている紙袋とを順繰りに見ていたが、ティルなりにわけが分かったのか、ぼくへと体を擦り付けてきた。
男が言った。
「やはり尻尾には触れないでください。手は・・・そのままにしておきましょう。もう、爪は立てないはずですから。それでは、私はこれで失礼します。どうぞ、ごゆっくり」
男が部屋から出て行くや否や、ティルはゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
その円い目は、ぼくの顔とぼくが持っている紙袋との間とを行ったり来たりしている。おねだりの仕種だった。
「分かったよ。早速、おやつにしよう」
我ながら、甘いな。とは思ったが、まぁ、偶にだし、いいだろう。
ぼくはベッドへと腰掛けた。ティルはぼくの真正面に、フローリングの床の上にペタリと座った。
紙袋の中には二、三口で食べ切れてしまう大きさの、様ざまな形のクッキーが入っていた。
「これは・・・魚の形か」
まさに、猫のおやつだな。と思いながら、ぼくはティルの目の前へとクッキーを持っていった。
「ホラ、お食べ」
当然のように、ティルはぼくの手から直にクッキーを、魚の頭の方からかじった。
今日は両手を縛められていないとはいえ、もしも、ティルが手でクッキーを受け取ったとしたら、その方がぼくは驚いていたと思う。
ティルはあっという間に、二口で魚の形のクッキーを食べ終えた。
もっと、ちょうだいと催促するかのように、ティルはぼくの人差し指をペロペロと舐める。
「ティル、くすぐったいよ。分かった。わかったから!」
ぼくは袋の中から適当にクッキーを引っ張り出し、ティルへと食べさせた。
ネズミの形のもあった。猫の顔のも肉球のも、あった。蛇のように波打つ、長い形のは・・・ややあって、ぼくは思い付いた。
「あぁ、尻尾か」
ティルのはこの間見たら、まだ短くボサボサとした、いかにも仔猫のようなのだった。
二か月以上経った今は、どうなっているのだろうか?ぼくの位置からでは見ることは出来ない。
後で確かめればいい。尻尾には、長さの他にも気になることがあった。
気になると言えば、このクッキーの味も、だった。ヒトも食べられて、しかも美味しいと男は言っていたが・・・
ぼくは尻尾の形のを、根元からかじった。甘くはなかった。塩っぽい、チーズの味がした。
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