98人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
ティルと目が合った。いや、ティルが見ているのはぼくではなく、ぼくが食べているクッキーだった。
ぼくは誘うように、咥えたままのクッキーの尻尾をユラユラと振って、ティルへと見せつけた。
案の定、ティルは食い付いてきた。一口で残りのほとんどを食べられてしまい、勢い余って、ティルの前歯とぼくのとがぶつかって・・・キスをした。
クッキーを食べ尽くしたはずなのに、ティルの口は唇は、ぼくから退かなかった。
しばらくしてようやくティルが退いた唇で、ぼくは言った。
「もっと食べるかい?」
ぼくは猫の顔の右半分を咥えて、ティルへと示す。これも又、一口で食べられた。
そうして残りのクッキー全てを同じようにして、ぼくはティルと一緒に食べた。
最後の一枚の、肉球の形のを食べ終える頃にはクッキーを食べているのか、それともティルとキスをしているのか、分からなくなっていた。
受付の男が言っていた「ご一緒にどうぞ」とは、こういうことではなかったと思う。
・・・多分。
クッキーにかキスにかは分からないが、物足りなさそうに自分の口の周りを舐めているティルの体へと、ぼくは視線を落とした。
なだらかな胸に、クッキーの欠けらが張り付いている。
胸だけではなかった。よくよく見ると腹や太もも、そして、もう既に勃ち上がっている若いオスにもクッキーの粉が降り掛かっていた。
ぼくが思ったのは汚いな。ではなく、舐めたらティルはどんな顔をするかな?だった。しなかったけれども。
その代わりに、ぼくはベッドから立ち上がり、ティルの腕を取った。
「おいで。一緒にシャワーを浴びよう。洗ってあげるよ」
ティルは今一つ分かっていないように、ぼくを見上げた。クッキーの粉に塗れたままで。
猫は水が嫌いなコも多い。・・・ティルはどうだろうか?
ぼくも恐るおそるだったが、ティルの方がずっと怖かったのだろう。文字通り「借りてきた猫」のように、お湯を張っていないバスタブの中で脚を伸ばしたまま、全く動かない。
ぼくはティルの脚から腹、そして胸へと徐じょにシャワーヘッドを動かした。
首から上はパニックになると困るので、止めておいた。
「怖くないよ。気持ちいいだろう?」
肩から背中にかけても、まんべんなくお湯を浴びせる。温まってきたのか、ティルの肌が薄っすらと赤みを帯びてきた。
最初のコメントを投稿しよう!