1 ミルク

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 ティルの顔が近い。と思った途端に、唇を舐められた。驚いていると、もう一度舐められた。  猫のフリをしているのか、それとも・・・本当に猫なのか、そんなことはもう、どうでもよくなってしまったぼくは、ティルへと口付けた。 ついさっき、ぼくの唇をかすめた薄い舌を絡め捕る。応えてくるのが楽しくて、ぼくは夢中で口付けた。  押さえたティルの頭の、髪のしっとりとした柔らかさにぼくはロシアンブルーを思った。 口付けが終わると、ティルはぼくへとのしかかってきた。着ていたシャツの、襟元をかじり引っ張ってくる。  「ごめん。今脱ぐから」 ぼくが服を脱いでいる間にも、ティルはぼくに顔や体を擦り付けてきた。 全てを脱ぎ終えて、ぼくはティルの体を抱き止め、抱きしめた。  ティルは小柄な方ではあったが、やせ過ぎてはいない。筋肉も脂肪も適度に付いていて、滑らかでしなやかな体をしていた。  ぼくの猫の好みもそうだった。美しい毛並みが最も映えるのは、いわゆる標準的な体重であり体形であると、ぼくは思う。 ティルはぼくの腕の中で、ゴロゴロと喉を鳴らしている。背中を撫でるとくすぐったそうに、でも気持ち良さそうに体をよじった。  後ろ手に手首を縛めている黒いゴムの手枷が、てかって見えるのが妙にいやらしかった。 そういうシュミまでは、持ち合わせていないはずなのに・・・  ぼくは自分の体を少し離して、ティルの体を見た。 形のきれいな鎖骨、色の薄い乳首の胸、そして・・・なだらかな腹の下には、淡い下生えの中で勃ち上がりつつあるオスの印があった。  手を伸ばし、そっとその頂きに触れてみると、ティルの小さな鳴き声が上がった。  ヒトが猫の鳴き真似をしている声ではない。かと言って猫の声そのものでもない。それでも聞けば、猫の姿を思い浮かべてしまうだろう声だった。 その声をもっと聞きたくて、ぼくは手を指を動かし続けた。先走りがにじみ出てきて、滑り易くなってくる。  ティルの声は次第に高く、細くなっていった。 「イキそう?」 ティルからの返事は、言葉では返ってこなかった。代わりに、切なげに頭をぼくの首のすぐ下へとグリグリと押し付けてくる。  同じ性に属しているから、大体の加減は分かっているつもりだった。例え、猫であったとしても変わらないだろう。
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