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ティルの顔が近い。と思った途端に、唇を舐められた。驚いていると、もう一度舐められた。
猫のフリをしているのか、それとも・・・本当に猫なのか、そんなことはもう、どうでもよくなってしまったぼくは、ティルへと口付けた。
ついさっき、ぼくの唇をかすめた薄い舌を絡め捕る。応えてくるのが楽しくて、ぼくは夢中で口付けた。
押さえたティルの頭の、髪のしっとりとした柔らかさにぼくはロシアンブルーを思った。
口付けが終わると、ティルはぼくへとのしかかってきた。着ていたシャツの、襟元をかじり引っ張ってくる。
「ごめん。今脱ぐから」
ぼくが服を脱いでいる間にも、ティルはぼくに顔や体を擦り付けてきた。
全てを脱ぎ終えて、ぼくはティルの体を抱き止め、抱きしめた。
ティルは小柄な方ではあったが、やせ過ぎてはいない。筋肉も脂肪も適度に付いていて、滑らかでしなやかな体をしていた。
ぼくの猫の好みもそうだった。美しい毛並みが最も映えるのは、いわゆる標準的な体重であり体形であると、ぼくは思う。
ティルはぼくの腕の中で、ゴロゴロと喉を鳴らしている。背中を撫でるとくすぐったそうに、でも気持ち良さそうに体をよじった。
後ろ手に手首を縛めている黒いゴムの手枷が、てかって見えるのが妙にいやらしかった。
そういうシュミまでは、持ち合わせていないはずなのに・・・
ぼくは自分の体を少し離して、ティルの体を見た。
形のきれいな鎖骨、色の薄い乳首の胸、そして・・・なだらかな腹の下には、淡い下生えの中で勃ち上がりつつあるオスの印があった。
手を伸ばし、そっとその頂きに触れてみると、ティルの小さな鳴き声が上がった。
ヒトが猫の鳴き真似をしている声ではない。かと言って猫の声そのものでもない。それでも聞けば、猫の姿を思い浮かべてしまうだろう声だった。
その声をもっと聞きたくて、ぼくは手を指を動かし続けた。先走りがにじみ出てきて、滑り易くなってくる。
ティルの声は次第に高く、細くなっていった。
「イキそう?」
ティルからの返事は、言葉では返ってこなかった。代わりに、切なげに頭をぼくの首のすぐ下へとグリグリと押し付けてくる。
同じ性に属しているから、大体の加減は分かっているつもりだった。例え、猫であったとしても変わらないだろう。
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