2 クッキー

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 ティルはまだ、眠っていた。今回もやはり、体を丸めるようにして。 ぼくはティルを起こさないように、そっとベッドを下りた。  この部屋には時計が見当たらなかった。脱ぎっぱなしの服の上着から携帯を取り出して、時刻を見た。大して時間は経っていない。  しかし、ぼくは帰り支度を始めた。このままティルと寝ていたら、きりがないように思えた。それが出来たら、どれほどいいだろう。とも考えながらも。  後は部屋を出るだけになってぼくは、まだ丸まって眠るティルの右頬へとキスをした。 「おやすみ。ティル。またね」  ぼくは眠っているティルを残し、部屋を出た。  受付に居た男へとティルが部屋で寝ていることを告げると、男は心得ているとばかりに、実にゆったりと応じた。 「お心遣いをありがとうございます。まだ仔猫なものですから。後で起こしておきます」 「よく眠ってたものだから・・・あ、そうだ。クッキー、ごちそうさま。ぼくにも美味しかったよ」  ぼくが言う礼に、男は控えめに微笑んだ。 「カンノ様のお口にも合ったのでしたら、幸いです。アレは私の手作りですので」 「えっ!?」 「冗談でございます。失礼致しました」 「・・・・・・」  ぼくはとっさに上手い返しも出来ずに、あいまいに笑いながら会計を済ませた。 
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