57人が本棚に入れています
本棚に追加
何飲む?俺コーヒーで、あー、そういえば名前聞いてなかったね。
「ハミエルです」
「ハミエルね、コーヒーでいい?」
「コーヒー?」
cafe、しんちゃん発音いいね。
「はい」
二つお願いします。
俺の名前は何と読む。
「北山(きたやま)、漱石」
「そうせき?」
そう、俺の名前は、夏目漱石からじいちゃんがつけたもの、だからあだ名は坊ちゃん、とか坊ちゃまだった。
わきにイートインスペースがある、立って食べる小さなテーブルが三つある、ガラス板の向こうでは叔父さんが忙しそうにパン作り。俺はここのパンのファンなのだ。
「おばさんはどうですか?」
「ありがとうございます、復帰はまだですね」
「そうですか」
ここのお母さんは入院していたんだが、退院して、今は自宅療養中。
「お見舞いありがとうございました」
「いえ、いえ、早く復帰してほしいです、俺の胃袋、おばさんの総菜で待ってるんで」
「あハハハ、ありがたいな、俺やオヤジじゃ無理だからな」
「それでも叔父さんのパンは俺の一番だから!」
ありがとうよ、遠くから聞こえた。
コーヒーが出てきた。
「いただきます」
「いただきます?」
どうぞ。
彼は、そのパンにかじりついた。
「んー、delicious」
「そうでしょ、これ食べたらその辺のパンは食べられないよ」
俺のサンドイッチを見ている。
「スペシャル?」
「いいでしょう?」
食べたそうな顔、一個の半分をあげた。
食パンじゃなくて、黒パン?ちょっと茶色い、楕円形をしている。カンパーニュとか何とか、ちょっと酸っぱい匂いがするんだけど、サンドイッチには合うんだよね。
俺の手からかぶりついた。かわいいというか、子供みたいな笑顔。
「うまい、マスターおいしいです、おいしいよー」
「そりゃよかった」
ここで、朝ごはん、それから出社、だから混んでいてもいい。
「そうだね、これはいいね、ねえ、失恋したのは、彼?」
違う、彼はもう奥さんがいる。
「そうか、彼だと思った」
「でも、俺の相手が男だってどうしてわかったの?」
昨日泣きながらそう言っていたから。
ハミエルもゲイ?首を振った。
「まさか、男は初めて?」
うんとうなずいた。
最初のコメントを投稿しよう!