第一話

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 何飲む?俺コーヒーで、あー、そういえば名前聞いてなかったね。 「ハミエルです」 「ハミエルね、コーヒーでいい?」 「コーヒー?」 cafe、しんちゃん発音いいね。 「はい」 二つお願いします。 俺の名前は何と読む。 「北山(きたやま)、漱石」 「そうせき?」 そう、俺の名前は、夏目漱石からじいちゃんがつけたもの、だからあだ名は坊ちゃん、とか坊ちゃまだった。 わきにイートインスペースがある、立って食べる小さなテーブルが三つある、ガラス板の向こうでは叔父さんが忙しそうにパン作り。俺はここのパンのファンなのだ。 「おばさんはどうですか?」 「ありがとうございます、復帰はまだですね」 「そうですか」 ここのお母さんは入院していたんだが、退院して、今は自宅療養中。 「お見舞いありがとうございました」 「いえ、いえ、早く復帰してほしいです、俺の胃袋、おばさんの総菜で待ってるんで」 「あハハハ、ありがたいな、俺やオヤジじゃ無理だからな」 「それでも叔父さんのパンは俺の一番だから!」 ありがとうよ、遠くから聞こえた。 コーヒーが出てきた。 「いただきます」 「いただきます?」 どうぞ。 彼は、そのパンにかじりついた。 「んー、delicious」 「そうでしょ、これ食べたらその辺のパンは食べられないよ」 俺のサンドイッチを見ている。 「スペシャル?」 「いいでしょう?」 食べたそうな顔、一個の半分をあげた。 食パンじゃなくて、黒パン?ちょっと茶色い、楕円形をしている。カンパーニュとか何とか、ちょっと酸っぱい匂いがするんだけど、サンドイッチには合うんだよね。 俺の手からかぶりついた。かわいいというか、子供みたいな笑顔。 「うまい、マスターおいしいです、おいしいよー」 「そりゃよかった」 ここで、朝ごはん、それから出社、だから混んでいてもいい。 「そうだね、これはいいね、ねえ、失恋したのは、彼?」 違う、彼はもう奥さんがいる。 「そうか、彼だと思った」 「でも、俺の相手が男だってどうしてわかったの?」 昨日泣きながらそう言っていたから。 ハミエルもゲイ?首を振った。 「まさか、男は初めて?」 うんとうなずいた。
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