長いおでかけ

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 メアリーは駅を出るとすぐに駆け出した。そこで初めに見つけたのであろうホットドッグ店で店主におすすめを訪ねると迷わずそれを購入した。リックも駆け寄ってピースになっていた彼女の指をトゥースに変えた。   「旅行に来て始めにすること、それはその土地の空気を吸いながらその土地のものを食べることだよ」   得意げにそう言うとメアリーは、ホットドッグにかぶりついた。 「違う。始めにするのは泊まる所で荷物をおろして、そこのご主人に挨拶をすることだ。今回の場合ご主人はあのばあさんのことだ。お腹が空いているなら、ばあさんの家でたらふく食えるだろ。あのばあさんのことだ、きっと可愛い孫のために御馳走を拵えていることだろうよ」 「ノンノン、ノォーン」  メアリーは馬鹿みたいにホットドッグを抱き上げてくるりと回った。そして、ホットドッグを最後まで頬張ると、包み紙を丁寧に折りたたみ始めた。 「わかってないなぁ全く。普段から外に出ないから視野が狭くなるのよ。周りをよく見てみなよ、景色が違う、気候が違う、住んでる人が違う、このホットドッグにしたって向こうと全然違う。景色が違うなら見て回る、気候が違うならそれに適した服を着る、人が違うなら言葉を交わす、食べ物が違うなら口に入れる。これらをしない奴は気が違っているわ」 「あぁ、納得だ。賛成だ。けれどそれらは後からでもできることだ。まずばあさんの家に行こう」 「そんなこと言って、おばあ様の家に行ったらもう外に出ないでしょ? いや、断言するわ、あなたは少なくとも今日1日は外出しない。絶対しない! しないに100万エニールーーー!!!」  大声でまくし立てられてリックはもう抵抗する気もなくなって、両手を挙げた。 「2週間もあるのに、なんでこうも急くのかなぁ」  ウンザリしつつもリックの瞳は日の光の所為だけではない輝きがあった。 「2週間しかだよ、リック!」  そう言ってメアリーは、ゴミ箱にきっちり小さな正方形になった包み紙を放り込んだ
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加