花の雪が降る冬の空の下

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「雪だ」 「あー、もうそんな季節か」 「寒いなー」 「手袋忘れた」 あのときも こんな雪が降っていた気がする 『同じ大学行って、また野球やろうな!泰成!』 『…あぁ。お前大学落ちんなよ』 同じ大学で野球をやると 約束したけど 〈やりたいことがあるから東京に行く。約束破ってゴメン〉 部活から帰った俺の携帯に 残された留守電 泰成の親に聞いて家を突き止め 一人暮らしを始めたばかりの泰成の家に 土足で押し入った 今思い出しても正気じゃなかった 『抱かせてくれなきゃこの場で首くくって死んでやる』 ガキ臭い甘えた脅し文句 幸いというか 残念というべきか 初めての男同士で上手くいくはずもなく 一生の一度のチャンスすら棒に振って 泣きじゃくる俺に あろうことかアイツは 『また今度な』 と言った そっから先はなし崩し 俺が求めれば応じてくる 出て行けとも言われない ぶち開けた壁の穴の修理代で 俺の罪は許されてしまったらしい 恋人なんて柄じゃないけど 付き合ってはいる 付き合ってもらっている かくして俺の 長年の片思いは叶ったのだった 「めでたし…めでたし…」
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