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「こうも車が少ないのは、ペーパーには嬉しいな」停めてあったのは、窓ガラスの中が見えない白いバンが一台だ。おそらく犯人たちのものと推測できた。
「俺は身を隠すぞ。いないものと思ってくれ」木村は椅子の前のスペースに無理やり入った。
「わかったよ。今までありがとう」
木村は何も答えなかった。
大事をとって、バンからは少し距離を置いた。
「ふう」息を整える。
木村と話しているうちは楽にしていられたものだが、一人となると途端緊張が襲ってくる。
「落ち着けよ」
自分に言い聞かせてドアを開ける。今回は伸びをしてる暇はない。真っ直ぐにバンへと歩き向かった。
バンはヘッドライトがついたままで、そのボンネットに座る人影が覗えた。
「お、お前が小山隆か」
小山はその、犯人を認識する。
「はい、奈々を返してください」
「や、約束だ。連れて行くと良い」
小山は拍子抜けした。犯人にしては、というか人間としても、ものすごく挙動不審だ。別に小山が何をするでもなく、その態度には怯えも見えた。正直、被害者にも見える。
もう一人の犯人が車から、奈々を引きずって降りてきた。腕には枷をはめていて、目の色は死んでいた。「お兄ちゃん…」
「連れて行くと良い」屈強な男だった。奈々を半ば放り投げるようにして、小山の元へ差出す。
彼は緊張しながらも、頭の片隅では冷静に二人の値踏みをしていた。
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