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「大体な、20しかないプロセスをどれだけだらだら書いたらそんなに長い本になるんだよ」木村は顔をしかめる。「そんなの読むくらいなら、ミステリーを読め。ほらこの前貸しただろ」
「ああ…、お前が気に入ってる作家のやつな」
「おもしろかった?」「どっかにやった」「…おい」
車はトンネルへと差し掛かる。それは深夜の一時半、車は彼らの乗る黄色い軽意外は何も走っていなかった。
「しっかし、こんなにゆっくり進んでて間に合うのかよ」
「職業柄、法定速度は守らないと気がすまないんだよ。でも、約束の時間までには、バッチリ、間に合いそうだ」にっ、と笑う。
「当たり前だ。命がかかってるんだ」
木村は大学生である小山と同い年にして、私立探偵をやっていた。その低い身長とは裏腹に、高校時代から彼の秀でた行動力をいつも小山は横で見ていた。今回彼を同行させたのも、その信頼が大きい。
「あとどれくらいで着きそう」
問うた小山に対して、面倒くさそうにカーナビに木村は目をやる。
「20分くらいだな」
「そうか」
小山はケチをつけられた本をこれ以上読み進める気にはなれなかった。正直心の中では、その意識の高さをそのまま文の長さに反映しました、みたいな雰囲気にも飽きていたのかも知れない。
腕を組み、理由もなくその低い天井を眺める。
ちょうど2日前のことを思い出していた。
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