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仕送りはもらいつつ、府内の大学に進学した小山であったが、やはり一人暮らしともなると、実家との関わり、というのは日に日に薄れていくものだ。
彼自身、大学に入学してからもう二年も経つ。例外なく、彼も1日に家族のことを気にかける回数が減って来る頃であった。
だからこそ、夕方、講義中に携帯電話が母親の名前を表示し、震え始めたときには驚いた。しっかりした母親であったから、講義の時間、というものもわきまえているはずだ。親族の訃報か、と緊張した。
急いで講義室を出て、電話に出る。
「もしもし、隆だけど」
「隆、今家?」母親の狼狽がひしひしと伝わる。
「いや、学校。なにかあった?」
「奈々が家に帰ってこないの」食い気味に母が答える。
奈々とは小山奈々、小山隆の妹だった。
「帰って来ないって…、まだ、6時だろ」
「ここ一週間、テスト期間だったから。普通なら、今頃は家に帰って来てるはずなの」
奈々はもう今年で高校2年になる。なにかやましいことがあっても、おかしくない年頃だろう。
「彼氏の家とかじゃないの…。もう奈々も17なんだし、何があるかわかんないよ」
「そうかしら?あんたが17の頃は、いつも、然るべき時間に帰って来てたじゃない」
「…最近の子は、そういうもんなの」
「警察に連絡したほうがいいかしら」母はかなり慌てているようだった。
「奈々とは連絡がついてるの」
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