土星

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「まだ」 「うーん。もうちょっと待ってみて、それでも連絡も何もなかったら警察、じゃない」 しかしそのちょっと後、まさかそんなことになるとは誰も想像していなかった。 「現在白のバンに乗って、府内を逃走中です。ナンバープレートXXXーXXXXを見かけた方は直ちに通報してください、繰り返します」 家に返ってテレビをつけると、ヘリコプターから見た市内の景色が、全国中継で流れていた。あまりの驚きに、小山はリモコンを手から落とした。 本日二度目の実家からの電話が鳴る。 さっきとは違ったのは、その母の声が今にも泣きそうなくらい震えていたところだ。 「奈々が、奈々が…、誘拐されたの!」 木村が大きな口を開けてあくびをする。 「居眠り運転だけは勘弁してくれよ」 「わーってるよ、ふわあ」 しかし、こんな夜中に、こんな景色も何もないところを運転していて、眠くならないのも無理はないだろう。小山は同情した。 「探偵の方は最近どう」 「浮気調査ばっかりだよ。でも、浮気するやつなんて大抵金持ちだからな、しっかりやればそれなりに稼げる。リピーターもできたぞ」木村は親指を立てる。 「浮気調査のリピーターって…」 「世の中、そんなのばっかりだ」     
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