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「小道具の俺達ですらこんなに良い気持ちなのに、あれだな、主人公とかもうどんな気でいるんだろうな」小山の横で弁当を食らっていたのはやはり木村だった。
「想像もつかないな」
母親には文化祭であることを伝えていなかった。昔から彼女はイベントごとに、かなり力を入れたキャラ弁を作る風習があって、高校生の小山には荷が重かったのである。小学校の頃にはピカチュウならまだしも、かなりコアなどくポケモンのキャラ弁を作ってくれたことがあった。せめて草タイプにしてくれよ…、なんてことを小山は思っていた。少しずれた親子なのは間違いない。
「明日からまた授業だぜ、小山」
「授業も悪くない」
「やってらんねえよ…」
小山は、木村と向かい合うように座っていたため、その背に近づいてくる存在には薄ら気がついていた。
「そんでさー、高橋が」そんな事はつゆ知らず話し続ける木村に、小山は目で合図を送る。
「ん」木村が振り返る。
「あわわ」そこに立っていたのは頬を赤らめた女子だった。
「あ、椅子使う?どくよ」木村はなおあっけらかんとしていた。
その女子は顔をブンブンと振る。「違う、違うの。これ」そう言ってノートの切れ端のような紙切れを木村に突き出した。「その、そういうことだから。待ってるね」
それだけ言い残すと彼女は元いた女子弁当連合に帰っていった。
「やったじゃん、木村」
「やった」
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