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木村の怪我にも気が付かなかったのか、周りの本山たちが見えないのか、本当にアホなのか、小山は臆すること無く木村のもとへと歩み寄り、その手を取った。
「なにしてんの小山、危ないよ」「何が?」彼は何も気にしていない風である。
「何って…、そこに」それだけ言って木村は息を呑む。
本山も、その子分も、なぜか顔を引きつらせて棒のように直立している。
「ああ、ごめん三人とも。彼はこれから大事な用事があるんだ。ほら、立って」
木村は何も言えなかった。
「ほら、鼻血拭いて。屋上へ行くぞ」
北校舎の屋上までは少し距離があった。
「なあ、さっきの、どうやったんだ」
「なんか…わかんないけど特技」
あの時、明らかに本山たちの顔には小山に対する恐れが浮かんでいた。
「実は親がヤクザとか」
「ないない、ヒラだよ。生まれつきの特技で、相手を怯えさせて、黙って動かなくする事が出来るんだ」
「もうあれは特技というか…」木村はため息をつく。「超能力の範疇だよ」
結局木村はその後きちんと北校舎屋上へ出向いたそうだが…、その後の話は小山も知らないし、ここで語られる必要もない。
「いやあ、なかなか儲かってるもんだからよ、こんなのも買っちゃった」木村は何か得意げに手元のカバンを探り出す。「内緒だぞ」
そう言って小山に手渡したのは、黒く、ずっしりとした、何か見覚えのある…、
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