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何で肉まん?と思いながらその包みを二つテーブルに並べたお皿に乗せる。
「あ、いや。せっかくだからさ。今日、スーパームーンだろ?それ食べながら一緒に見ようと思って」
鼻を掻きながら言うのは照れている証拠。
ダメだ。
顔がにやけちゃう。
「それと、俺は別れたいなんて思ってないからな。ちゃんとサツキのこと大事だって思ってる」
大事……。
嬉しくて目の奥が熱くなる。
「……ごめんなさい」
「わかればよろしい」
そう言って私の頭をクシャッと撫でてくれる。
それだけでもうシッポはち切れそうに振っちゃう私。
「大好き……」
「知ってる。ほら、肉まん冷めないうちに食おう」
ベランダをカラカラと開けて二人並ぶ。
「お月様、綺麗だね」
「ああ」
「肉まんも美味しい」
「ああ」
愛してるとか大好きとか、決して言ってはくれないけれど。
「私ね、ヨシ君とお月様見たかったんだ」
「わかってるって。だから俺、来たんだろ」
ああ、そっか。
その言葉だけで、十分愛されていたんだと気付いた夜。
あの月のように私の心も丸く満ち満ちていた。
了
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