満ちた月のように

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満ちた月のように

玄関を開けて暗い部屋に入る。 明かりをつける前にカーテンを閉めようと窓辺に立った。 レースのカーテンに透けて輝く大きくて綺麗なお月様。 そういえば今日はスーパームーンだと朝のニュースで言っていたっけ。 ヨシ君にも教えてあげようと思ってスマホを手に取る。 メッセージアプリを開いて、昨日のメッセージが目に入りはたと気付いた。 今日これで何度目? 同じ事繰り返してバカみたいと自嘲する。 そっか。 今ケンカ中だった。 最後のメッセージは私が発した『じゃあ、別れる?』だった。 既読は付いているけど、その返事はない。 泣きそうになってスマホをローテーブルの上に置き、また窓辺に戻って月を眺める。 あんな事、書いちゃいけなかった。 別れたいだなんて、少しも思ってはいないのに。 いつもよりも大きな月にはウサギが見える。 それが涙でじんわりと滲んできた。
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