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「ストールに……ケチャップついてる」
見えてしまったので注意はしたが、これが用件ではない。
「お腹空いたときに、ストールのにおいかいだら、ちょっとした虫養いになるかな」
白いストールに赤い染みがついたのに、ケイはあきれたことを言う。ケチャップを指でこそげて、またパンに食らいついている。
「ねえ……ケイ、教えて欲しいんだ」
「教えられるようなことは、何もないけど?」
腹ペコケイとぼくは、クラスが同じではあるけれど、親しくはない。彼女にとって、ぼくは、パン屋の息子としか認知されていない。ぼくは、彼女が、二時間前に昼食を食べたのに大きなパンをかじる食いしん坊だということを知っている。
「そのパン、どこで売ってたか、教えてよ」
「屋台。三つ目の裏通りに出てた」
屋台であることは、見当がついていた。広場か、通りの入口あたりにあると踏んで、一周しても見つからないはずだった。
ありがとうと、礼を言って走り出したところ、ケイの声が追いかけてきた。
「行っても、もういないよ」
「……いないって?」
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