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喧嘩――もとい、特訓と講義は数週間続いた。
木刀を手にしたレインは、男に対して三度、正確に、同じポイントに叩き込んだ。受け止めた木刀は破壊され、木製の刃は回転しながら宙を舞う。彼女はさらに踏み込み、男の顔面へ刃を叩きつける。彼は折れた柄で受け止めると、折れた刃を操り、彼女の背に差し向けた。
「お前の武器は正確さだ。全く同じ場所に、全く同じ角度で何度も叩きこめ。続ければオリハルコンだって破壊できる。ただし変化はつけろ」
背後から迫る刃を水で受け止める。彼女の背後で、短剣のように形状を変えた水が、折れた木刀と空中で切りあった。
「魔法はまだまだだな。いい加減、魔力から水に変換する術を身に着けろ。あと予備動作!」
レインの下段蹴りをバックステップで避ける。軸足を変えた彼女は、回し蹴りへと派生し、勢いのまま切り付けた。
「魔力が低いことを言い訳にするな。何もお前の肉体を変換しろと言っている訳じゃない。魔力が低くとも、強い意思があれば必ずできる」
彼女の剣先は男の鼻先を掠める。出血するには至らず、わずかに赤くなるまでに留まった。
「短期間の割に成長しているな。だが魔法がまだまだだ。今日はここまでにして、東の街へ行くぞ。用意しろ」
「私も行くのか?」
最後にレインを投げ飛ばし、当然だとばかりに歩き出す。彼女はズボンに着いた砂を払うと、男の後を追った。
「なぜ私も行く必要があるんだ?」
「勇者ギルドに行ったことは?」
エルフから借りた馬に馬具を付けながら尋ねる。馬はおとなしく、全く暴れないでいた。
「ない」
「だろうな。お前に会わせたい人がいる。バカでクソ野郎だが、今後、必ずお前の力になってくれる。さぁ、乗れ」
不承不承ながらレインは馬に跨る。男はそれを見届けると、手綱を引いて歩き出した。
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