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雪がしんしんと降っている。
生まれてから16年、ハヤトはずっとこの地に住んでいるが、記憶の残っている限りでは初めてであろう空からの贈り物に、若干ウキウキしながら学校へ歩いていた。
吐く息は白く、振り返れば白銀の絨毯に大小2つの足跡がきれいに残されている。小さいほうの足跡の主はというと、ハヤトの2メートルほど前を歩いている。
幼なじみのアカネだ。2年前に別の街に引っ越してしまって、今は近所ではないのだが、偶然にも高校が一緒になり、地下鉄の最寄り駅からほぼ毎日一緒に登校している。
「ねぇ、ハヤト!このホットドッグとってもおいしいの!」
駅で会った時から手にしていたことを考えると、家の近所で買ってきたのだろう。アカネは口にケチャップをつけながら、ハヤトのほうに向き直る。白いマフラーに真っ赤なケチャップが付いてしまいそうなので、早めにティッシュで拭いてやる。
「そうかい、ならなんで僕の分はないのかな」
「もちろんあるよ!ちゃんと2つ買ってきたんだ~」
アカネはそう言いながら、肩からかけた鞄を開ける。
「ほらここにね、入れて…おい、たん、だけど…、あれっ、ない!?」
「今アカネが食べてるのが2つ目だよ」
「えっ、嘘!」
「夢中で食べてたからね。あーあ、よほど美味しかったんだろなぁ」
「うん、美味しかったの!また買ってきてあげるね!」
ポケットに手を入れながら、少し皮肉を込めて言ったが、どうやら伝わらなかったようだ。気づかれないぐらいがちょうどいいのだろうか。そんなことを考えながら、ハヤトは少し前に行ってしまった華奢な背中を、小走りで追いかけた。
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