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甘味喫茶うさぎや。父が残してくれた店。
人と神様が来店する。それだけで、特別なことなど何も起きない。起きてほしくない。
だから、人にも神様にも変わらずに接する。
「あぁ、それではありがたく頂こう」
彼は花の形をした干菓子を手に載せて、しばし、眺めている。
一方の朔は早々に食べてしまったようだ。
「甘い甘い甘い……」
それはそうだろう。それは砂糖を練り固めたものなのだから。
「朔さん。コーヒーのお替り、サービスしますよ」
「慶一郎頼むのじゃ」
黒い薫り高いコーヒーを注ぐと、朔はカップに口を付ける。
「苦い苦い苦い…」
彼はいつになっても味の感想が下手だ。
「なぁ、天満。この店は良い店じゃろう。コーヒーも旨ければ、慶一郎の菓子も旨い。……わしのおすすめは抹茶アイス!これが苦くて、甘くて……苦甘い!」
そう楽しそうに言う朔に、天満はニコニコとした笑顔を向ける。
「君の御用達のお店に連れてきてくれて、ありがとう」
「天満は年が明けてからずっと忙しかったからな。ようやくこのころは一息つけるのだろう。人の戦争も終わったのだし」
「終わってはいないけど……。でも、今は一息つける季節だな」
そう言って、再び、天満は手のひらの菓子に目を向ける。
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