苦いチョコレート

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コロネはモンブランにこう言った。「ねえ、1つ聞いていい?」「え?」「バレンタインのお返しくれたのはとてもうれしい。このキュートなラッピングの中に、チョコレートが入っているのか、クッキーが入っているのか、それとも可愛い小物、いや、アクセサリー、っなわけないか、が、入っていてもうれしいんだよね。」モンブランは不機嫌と不思議が入り混じったような相槌をうちながらバッグを肩にかついだ。「・・・」「それでね、」コロネの言いたい事は、ここから始まるのかと察したモンブランは少し緊張してきた。コロネはポテトチップス1袋分くらいのプレゼントを片手でかかげながらこう言うのだ。「これって、お返し、それともお礼?」「は?」モンブランは目が点になった。「そんなの考えた事、ないよ。」そんなもんどっちでもいいだろと思いながらも、モンブランはだんだん困惑してきた。「そんなことないよ、お返しかお礼かで全然違うんだから。」「じゃあ、お返しとお礼ってどう違うんだよ。」モンブランは逆切れした。少しびっくりした様な表情を浮かべたコロネは説明し始めた。「お返しってなんだか機械的だよね、決まっているから渡しているみたいな。お礼はお礼する相手に輪郭があるというか、お礼する側がいろいろその人の事を考えているみたいな。お返しは、その人が本当は渡したくないんだけど、仕方がないから渡しているって感じかな。そうそう、お返しは悪い意味でも使われるでしょ?」「君が今手に掲げているラッピングがお返しかお礼かって事?」「そう。一応私は本命でしたからね。モンブランがお返しと思っているのか、お礼だと思っているのかは、カレー2皿について、じゃがいもが2つ多いかそうでないかくらい違うのよ。」「じゃあ、ケーキで言えば、いちごショートで苺が乗っているか、そうでないかくらい?」「そこまでの大差はない。」「ははは、その違いはなんやねん。」「まあ、ケーキの苺ほどではないけれど、カレーのじゃがいも2,3個くらいは違うってことよ。」「うーん、じゃあ、」コロネの耳がきつねの様にピンと大きくなった。「お返し!」モンブランが笑顔で言ったその瞬間、コロネは凍りついた表情を浮かべながら涙目でモンブランと反対方向に自転車を走らせた。「あの、僕も本命だったんですけど。」モンブランはそう言いながら笑いがこみあげてきた。
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