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見えるって……それは見えるだろう。今、目の前にいるんだから。
「ごめんなさい……私、ここの生徒だったんですけど……周りの人には気づかれないようになっていて……」
女性はあたふたして言った。
その様子を見て、どうにかできないか、少し脳内をフル回転させた。
「君はつまり、存在が認識されていないってこと?」
「はい……」
俺が何とかしなければ。比呂は考えた。
「俺が君のこと知っている人物を手当たり次第探すよ」
そう言ったが、女性は首を振るった。
まるで余計なことはしなくていい、という風に。
「私、貴方のこと……そういうところ……前から好き」
女性はそう言って、肩を震わせて口元が笑っていた。
冗談なのか、はたまた本気なのか。
比呂は何かしらの憎悪みたいなものを感じた。
「これから私と一緒に……ずっと一緒に……」
女性は比呂に近づいていく。
比呂は足が動かず、金縛りになるよな錯覚に陥るが、近づく女性を抱きしめた。
「変なキャラ作りはするな。後、何となく知っていた。お前が屋上でずっと俺のことを見ていたの……」
「えっと……」
「俺も好きだ」
比呂はそっと女性の頭を撫でた。
「というより、一目惚れだ」
「そう……」
女性は物足りなそうに、そっぽを向いた。
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